2026年度以降の適用が見込まれる新リース会計基準。しかし「いつから準備すべきか」「具体的な仕訳はどう変わるのか」と悩む経理担当者の方も多いのではないでしょうか。本記事では、新リース会計基準の概要や適用時期、IFRS第16号との関連といった基礎知識から、実務で必須となる仕訳例、財務諸表への影響まで、専門家が網羅的に解説します。新基準の結論は、原則すべてのリースを資産・負債として計上する「オンバランス化」です。この記事を読めば、複雑な新基準の要点を正確に理解し、システム活用を含めた効率的な対応策までわかります。
新リース会計基準とは そもそも何が変わるのか
2026年4月1日以後開始する事業年度から、日本の会計基準は「新リース会計基準」へと移行します。この変更は、特にこれまで「オペレーティング・リース」として処理してきた契約が多い企業にとって、財務戦略や業務プロセスに大きな影響を及ぼす可能性があります。
新リース会計基準の最も重要な変更点は、借手側の会計処理において、ほぼすべてのリース契約を資産・負債として貸借対照表(B/S)に計上する「オンバランス化」が原則となることです。本章では、この新基準がなぜ導入されるのか、その背景と目的、そして「オンバランス化」が具体的に何を意味するのかを基礎から解説します。
新基準が導入された背景 IFRS第16号との関連
新リース会計基準が導入される直接的な背景には、国際的な会計基準であるIFRS(国際財務報告基準)第16号「リース」とのコンバージェンス(収斂)があります。
従来の日本の会計基準では、リース契約は「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」に分類されていました。このうち、オペレーティング・リースは費用処理のみで、貸借対照表には資産や負債が計上されませんでした(オフバランス処理)。
しかし、このオフバランス処理に対して、投資家など財務諸表の利用者から「企業がリース契約によって抱えている実質的な負債が財務諸表に反映されず、企業の財政状態を正確に把握できない」「企業間の比較可能性が損なわれている」といった懸念が長年指摘されてきました。
こうした声を受け、国際会計基準審議会(IASB)は2016年にIFRS第16号を公表し、借手のリースを原則すべてオンバランス化する会計処理を導入しました。日本の新リース会計基準は、この国際的な潮流に合わせ、財務諸表の透明性と国際的な比較可能性を高めるために開発されたものなのです。
新リース会計基準の目的 オンバランス化とは
新リース会計基準の主な目的は、リースに関する会計処理と開示を改善し、投資家をはじめとする財務諸表利用者に、より有用な情報を提供することにあります。その目的を達成するための中心的な概念が「オンバランス化」です。
「オンバランス化」とは、これまで貸借対照表に計上されていなかった取引を、資産および負債として計上することを指します。新リース会計基準では、借手は原則としてすべてのリース契約について、リース期間にわたり原資産を使用する権利を「使用権資産」として、将来のリース料支払い義務を「リース負債」として、それぞれ貸借対照表に計上する必要があります。
従来の会計処理との違いをまとめると、以下のようになります。
| リース取引の種類 | 従来の会計基準 | 新リース会計基準(原則) |
|---|---|---|
| ファイナンス・リース | オンバランス(資産・負債計上) | オンバランス(使用権資産・リース負債を計上) |
| オペレーティング・リース | オフバランス(費用処理のみ) | オンバランス(使用権資産・リース負債を計上) |
この表が示す通り、最大の変更点はオペレーティング・リースの扱いです。これにより、企業がリース契約を通じて利用している資産の実態と、それに伴う将来の支払い義務が財務諸表上で可視化されることになり、企業の財政状態や経営成績をより実態に即して評価できるようになります。
新リース会計基準の適用時期はいつから
2023年5月に企業会計基準委員会(ASBJ)から公開草案が公表された新リース会計基準は、企業の財務戦略に大きな影響を与える可能性があります。特に経理・財務担当者にとって、いつからこの新基準が適用されるのかを正確に把握し、計画的に準備を進めることが極めて重要です。ここでは、新リース会計基準の適用スケジュールについて、強制適用の開始時期、早期適用の可否、そして初年度に認められる経過措置を詳しく解説します。
強制適用の開始時期
新リース会計基準の強制適用は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首からとされています。例えば、3月決算の企業であれば、2027年3月期の期首である2026年4月1日から適用が開始されます。
また、四半期財務諸表を作成している企業の場合は、適用初年度の期首後に開始する四半期会計期間の期首からの適用となります。つまり、3月決算企業の場合、2026年4月1日から始まる第1四半期会計期間から新基準に沿った会計処理が必要です。適用開始までにはまだ時間がありますが、対象となるリース契約の洗い出しやシステム対応の検討など、準備には相応の期間を要するため、早期からの情報収集と計画策定が求められます。
早期適用は可能か
新リース会計基準では、強制適用を待たずに前倒しで基準を適用する「早期適用」も認められています。
具体的には、2024年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から早期適用が可能です。3月決算企業を例にすると、2025年3月期の期首(2024年4月1日)から新基準を適用することができます。
早期適用を検討する主な理由としては、以下のような点が挙げられます。
- IFRS(国際財務報告基準)第16号をすでに適用している海外子会社との会計方針を統一し、連結決算業務を効率化したい場合
- 先行して新基準に対応することで、業務プロセスの見直しやシステム導入を余裕をもって進めたい場合
- 投資家に対して、国際的な会計基準との整合性が高い財務情報を提供したい場合
ただし、早期適用には会計処理の変更を前倒しで行うための体制構築が不可欠です。自社の状況やリソースを十分に考慮した上で、早期適用のメリット・デメリットを慎重に比較検討する必要があります。
適用初年度の経過措置
会計基準の変更は、過去に遡って会計処理を修正する必要があるため、企業にとって大きな実務負担となります。この負担を軽減するため、新リース会計基準の適用初年度には特別な「経過措置」が設けられています。
適用方法には、原則的なアプローチと、簡便的なアプローチの2つが認められており、企業はいずれかを選択することができます。
| 項目 | 原則的処理(リトロスペクティブ法) | 簡便的処理(修正リトロスペクティブ法) |
|---|---|---|
| 概要 | 表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首に遡って新基準を適用し、過去の財務諸表を修正再表示する方法。 | 適用初年度の期首に、新基準を適用した場合の累積的影響額を利益剰余金などに加減算する方法。過去の財務諸表は修正しない。 |
| 特徴 | 期間比較可能性が完全に確保される。 | 過去の財務諸表を修正する必要がなく、実務負担が大幅に軽減される。 |
| 実務負担 | 大きい(過去の契約情報をすべて遡って再計算する必要がある)。 | 小さい(多くの企業がこちらを選択すると予想される)。 |
特に、実務負担の少ない「簡便的処理(修正リトロスペクティブ法)」を選択した場合には、さらに以下の簡便的な取り扱いが認められており、企業の対応を後押しします。
- 適用開始日より前に締結されたリース契約について、新基準におけるリースの定義を再検討しないことができる。
- 使用権資産の計上額を、リース負債と同額にすることができる。
- 適用開始日より前に発生した原状回復費用にかかる資産除去債務を、使用権資産の価額に含めないことができる。
これらの経過措置を適切に活用することで、新リース会計基準への移行をよりスムーズに進めることが可能です。自社にとってどの方法が最適か、監査法人とも相談しながら慎重に決定することが重要です。
新旧リース会計基準の変更点を比較
新リース会計基準の導入により、企業の会計処理、特に「借手」側の実務は大きく変わります。一方で、「貸手」側の会計処理には抜本的な変更はありません。ここでは、新旧の基準で何がどのように変わるのかを、借手と貸手の両面から具体的に比較・解説します。
借手の会計処理 すべてのリースを原則オンバランス
今回の新リース会計基準における最も大きな変更点は、借手の会計処理です。これまで、リース契約は「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2種類に分類されていました。ファイナンス・リースは資産・負債として貸借対照表に計上(オンバランス)されましたが、オペレーティング・リースは賃貸借処理として費用計上するのみ(オフバランス)でした。
しかし、新基準ではこの区分が原則として撤廃されます。例外とされる短期リース・少額リースを除き、すべてのリース契約について、資産(使用権資産)と負債(リース負債)を貸借対照表に計上する「オンバランス処理」が義務付けられます。これにより、これまでオフバランスであったオペレーティング・リースも企業の資産・負債として財務諸表に反映されることになり、財務状況の実態をより正確に把握できるようになります。
| 項目 | 旧リース会計基準 | 新リース会計基準 |
|---|---|---|
| ファイナンス・リース | オンバランス処理(リース資産・リース債務を計上) | 原則としてすべてのリースをオンバランス処理 (使用権資産・リース負債を計上) ※短期・少額リースの例外あり |
| オペレーティング・リース | オフバランス処理(支払リース料を費用計上) | |
| 損益計算書(P/L)への影響 | 【ファイナンス】減価償却費+支払利息 【オペレーティング】支払リース料 | 減価償却費+支払利息 |
| 貸借対照表(B/S)への影響 | 【ファイナンス】資産・負債が増加 【オペレーティング】影響なし | 原則すべてのリースで資産・負債が増加 |
使用権資産とリース負債の計上
新基準における「オンバランス化」とは、具体的に「使用権資産」と「リース負債」を計上することを指します。
- 使用権資産:リース期間にわたり、原資産(リース対象の物件や設備など)を使用する権利を資産として認識するものです。
- リース負債:リース期間における将来のリース料支払義務を、利息相当額を控除した現在価値で算出して負債として認識するものです。
この変更により、これまで費用処理のみで済んでいた多くのオペレーティング・リース契約についても、契約締結時に資産と負債を計上する作業が必要となります。その結果、企業の総資産と負債総額が増加し、自己資本比率や負債比率といった財務指標に大きな影響を与える可能性があります。
貸手の会計処理 大きな変更はなし
借手の会計処理が大きく変わる一方で、貸手側の会計処理については、現行の会計基準から大きな変更はありません。
貸手は引き続き、リース契約を「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」に分類し、それぞれに応じた会計処理を行います。この分類基準も、所有権の移転の有無やリース料総額の現在価値など、従来の考え方が基本的に踏襲されます。
| 項目 | 旧リース会計基準 | 新リース会計基準 |
|---|---|---|
| リースの分類 | ファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類 | 従来通りの分類を継続 |
| ファイナンス・リースの処理 | リース債権を計上し、利息相当額を収益として認識 | 従来通りの処理を継続 |
| オペレーティング・リースの処理 | リース資産を固定資産として計上し、受取リース料を収益として認識。減価償却を行う。 | 従来通りの処理を継続 |
このように、貸手にとっては実務上の影響は限定的です。ただし、取引先である借手側の会計処理や財務状況が大きく変化するため、与信管理などの面でその影響を理解しておくことは重要です。
新リース会計基準に対応する実務と仕訳例
新リース会計基準の導入により、特に借手の会計処理は大きく変わります。ここでは、具体的な数値例を用いて、リース契約開始から決算、リース料支払いまでの一連の実務の流れと仕訳例を時系列で分かりやすく解説します。
以下の条件のリース契約を例に進めていきましょう。
| リース対象資産 | 事務用複合機 |
|---|---|
| リース期間 | 5年 |
| 年間リース料 | 1,000,000円(毎年期末払い) |
| 割引率 | 3% |
| リース料総額 | 5,000,000円 |
| リース負債・使用権資産の計上額 | 4,579,708円(リース料総額の割引現在価値) |
使用権資産とリース負債の計上時の仕訳
リース期間の開始日において、借手は、リース資産を使用する権利として「使用権資産」を資産に、将来のリース料支払義務として「リース負債」を負債に計上します。これが「オンバランス化」の具体的な第一歩です。
計上額は、リース料総額を、契約時に設定した割引率で割り引いた「割引現在価値」で計算します。今回の例では、4,579,708円を計上します。
【仕訳例:リース開始日】
| 勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 使用権資産 | 4,579,708円 | リース負債 | 4,579,708円 | 複合機リース契約開始に伴う資産・負債計上 |
決算時の減価償却費と支払利息の仕訳
決算日には、計上した使用権資産とリース負債に対して、それぞれ会計処理が必要です。具体的には「使用権資産の減価償却」と「リース負債に係る支払利息の計上」の2つの処理を行います。
使用権資産の減価償却
計上した使用権資産は、固定資産と同様に減価償却を行います。原則として、リース期間を耐用年数として定額法で償却します。
【計算式】
4,579,708円 ÷ 5年 = 915,942円(1年あたりの減価償却費)
【仕訳例:決算日】
| 勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 915,942円 | 使用権資産減価償却累計額 | 915,942円 | 使用権資産の当期減価償却費計上 |
リース負債に係る支払利息の計上
リース負債は、割引計算をしているため、時の経過とともに利息が発生します。決算日には、期首時点のリース負債残高に割引率を乗じて、当期分の支払利息を費用として計上します。この処理により、計上した利息の分だけリース負債が増加します。
【計算式】
4,579,708円(期首リース負債残高) × 3% = 137,391円(1年目の支払利息)
【仕訳例:決算日】
| 勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 支払利息 | 137,391円 | リース負債 | 137,391円 | リース負債に係る当期支払利息計上 |
リース料支払い時の仕訳
契約に従ってリース料を支払った際の仕訳です。旧基準では支払額の全額が「リース料」として費用処理されましたが、新基準では異なります。
新基準では、支払ったリース料は、利息の支払いではなく「リース負債の元本返済」として扱われます。したがって、支払額の分だけリース負債を減少させる処理を行います。
【仕訳例:リース料支払日(期末)】
| 勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| リース負債 | 1,000,000円 | 現金及び預金 | 1,000,000円 | 当期リース料支払い |
この結果、1年目の期末リース負債残高は、期首残高に支払利息を加え、支払額を差し引いた3,717,099円(4,579,708円 + 137,391円 – 1,000,000円)となります。翌期はこの残高を基に、同様の計算と仕訳を繰り返していくことになります。
会計処理の例外 短期リースと少額リース
新リース会計基準では、原則としてすべてのリース契約を資産・負債として計上(オンバランス)しますが、実務上の負担を軽減するため、特定のリースについては簡便的な処理が認められています。これが「短期リース」と「少額リース」に関する例外規定です。これらの要件を満たす場合、企業はオンバランス化せず、従来通りリース料を費用として処理することを選択できます。ここでは、それぞれの定義と要件について詳しく解説します。
短期リースの定義と要件
短期リースとは、リース期間が12か月以内であるリースを指します。この要件を満たすリース契約については、使用権資産とリース負債を計上せず、リース料総額をリース期間にわたって定額法などの合理的な方法で費用処理することが可能です。
具体的な要件は以下の通りです。
| 項目 | 要件・内容 |
|---|---|
| リース期間 | リース開始日におけるリース期間が12か月以内であること。この「リース期間」には、借手が延長オプションを行使することが合理的に確実な期間も含まれるため、契約書上の期間だけでなく実質的な期間で判断する必要があります。 |
| 購入オプション | 当該リースに購入オプションが含まれていないこと。ただし、含まれている場合でも、借手がそのオプションを行使することが合理的に確実でない場合は、短期リースの要件を満たします。 |
| 会計処理 | 使用権資産・リース負債を計上せず、支払リース料を費用として処理します(オフバランス処理)。 |
この簡便的な処理は強制ではなく、あくまで企業の選択に委ねられます。したがって、短期リースの要件を満たす契約であっても、原則通り資産・負債として計上することも可能です。適用する際は、資産の種類ごとに会計方針として選択し、継続的に適用する必要があります。
少額リースの定義と要件
少額リースとは、リース取引の対象となる原資産そのものが少額であるリースを指します。例えば、PC、タブレット端末、事務用電話機、オフィス家具などが典型例です。少額リースの簡便的な処理は、個々のリース資産ごとに適用の可否を判断します。
少額リースの主な要件は以下の通りです。
| 項目 | 要件・内容 |
|---|---|
| 金額基準 | 原資産が新品であった場合の価額が少額であること。日本の会計基準案では具体的な金額は明示されていませんが、先行するIFRS第16号では、参考として5,000米ドル(約50万円~60万円程度)以下という目安が示されています。 |
| 判断単位 | 簡便法の適否は、他のリース資産との関連性などを考慮せず、リース資産ごと(underlying asset by underlying asset)に独立して判断します。例えば、1台あたりの価値が少額なPCを50台リースする場合でも、1台ずつが少額リースの要件を満たせば、全体として簡便的な処理を選択できます。 |
| 会計処理 | 短期リースと同様に、使用権資産・リース負債を計上せず、支払リース料を費用として処理します(オフバランス処理)。 |
少額リースの簡便的な処理も、短期リースと同様に企業の選択適用となります。多数の少額なリース契約を抱える企業にとって、この規定を活用することは、新基準への対応における事務負担を大幅に削減する上で非常に有効な手段となります。
新リース会計基準が財務諸表に与える影響
新リース会計基準の導入は、特にこれまでオペレーティング・リースを多用してきた企業にとって、財務諸表に大きな影響を及ぼします。本質は「オンバランス化」にあり、これまで注記情報に留まっていたリース契約が貸借対照表(B/S)に資産・負債として計上されるためです。これにより、企業の財政状態や経営成績がより実態に即して表示されることになります。具体的に、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書のそれぞれにどのような影響があるのかを詳しく見ていきましょう。
貸借対照表への影響
新リース会計基準の最も大きな影響が現れるのが貸借対照表です。原則としてすべてのリース契約がオンバランス化されるため、資産と負債が両建てで増加します。
具体的には、借手はリース期間にわたってリース資産を使用する権利を「使用権資産」として資産計上し、将来のリース料支払義務を「リース負債」として負債計上します。これまでオフバランスであったオペレーティング・リースも対象となるため、資産と負債が同時に膨らむことになります。
| 項目 | 旧基準(オペレーティング・リース) | 新基準 |
|---|---|---|
| 資産 | 計上なし | 「使用権資産」を固定資産に計上 |
| 負債 | 計上なし | 「リース負債」を流動負債・固定負債に計上 |
この変化は、企業の財務指標にも次のような影響を与えます。
- 自己資本比率の低下:分母である総資産が増加する一方で、分子の自己資本は変わらないため、自己資本比率(自己資本 ÷ 総資産)は低下します。
- 負債比率の上昇:リース負債の計上により負債総額が増加するため、負債比率(負債 ÷ 自己資本)は上昇します。
- 総資産利益率(ROA)の低下:分母である総資産が増加するため、ROA(当期純利益 ÷ 総資産)は低下する傾向にあります。
これらの指標は企業の財務健全性を示す重要なバロメーターであるため、金融機関からの借入や格付けに影響を及ぼす可能性があります。
損益計算書への影響
損益計算書(P/L)では、費用の計上方法と内訳が大きく変わります。旧基準のオペレーティング・リースでは、支払リース料を定額で費用(主に販売費及び一般管理費)として処理していました。
一方、新基準では、リース料という名目での費用計上はなくなります。代わりに、資産計上した「使用権資産」の減価償却費と、「リース負債」に係る支払利息をそれぞれ費用として計上します。
| 項目 | 旧基準(オペレーティング・リース) | 新基準 |
|---|---|---|
| 費用項目 | 支払リース料(主に販管費) | 減価償却費(主に販管費)+ 支払利息(営業外費用) |
| 費用計上額 | リース期間中、原則として定額 | リース期間の前半に大きく、後半に小さくなる傾向(費用の前倒し計上) |
この変更により、利益の構造にも変化が生じます。支払利息は利息法で計算されるため、元本残高の大きいリース期間の初期ほど金額が大きくなります。その結果、減価償却費と支払利息の合計額は、リース期間の前半に大きく、後半にかけて減少していく「費用の前倒し計上」という特徴があります。
また、利益段階への影響として、以下の点が挙げられます。
- 営業利益の増加:これまで販管費に計上されていた支払リース料がなくなり、代わりに減価償却費が計上されます。支払利息は営業外費用となるため、多くの場合、営業利益は増加する傾向にあります。
- EBITDAの増加:EBITDA(利払前・税引前・減価償却前利益)は、支払利息と減価償却費を足し戻して計算されるため、新基準の適用により増加します。これは企業価値評価に影響を与える重要なポイントです。
- 経常利益への影響:リース期間の初期は支払利息が大きいため、営業利益が増加しても、経常利益は旧基準と比べて減少する可能性があります。
キャッシュフロー計算書への影響
キャッシュフロー計算書(C/S)では、キャッシュフローの総額自体に影響はありませんが、その表示区分が変更されます。
旧基準のオペレーティング・リースでは、リース料の支払額の全額が「営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)」のマイナス項目として表示されていました。
新基準では、リース料の支払いが「リース負債の元本返済部分」と「利息の支払部分」に分解されます。そして、元本返済部分は「財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)」、利息支払部分は「営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)」として表示されるのが一般的です。(※利息の支払いは財務CFに区分することも認められています)
| 項目 | 旧基準(オペレーティング・リース) | 新基準 |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュフロー | リース料支払額(マイナス) | 利息支払額(マイナス) |
| 財務活動によるキャッシュフロー | 影響なし | リース負債の元本返済額(マイナス) |
この結果、営業CFは増加し、財務CFは減少することになります。見かけ上、営業活動で生み出すキャッシュが増加するため、企業の収益力をより良く見せる効果があります。ただし、これはあくまで表示区分の変更によるものであり、企業から出ていくキャッシュの総額(キャッシュ・アウトフロー)が変わるわけではないという点を正しく理解しておくことが極めて重要です。
効率的な対応にはシステムの活用が不可欠
新リース会計基準の適用により、これまでオフバランス処理が可能だったオペレーティング・リースも、原則として貸借対照表に資産・負債として計上(オンバランス化)する必要があります。これにより、経理担当者の業務は大幅に複雑化します。
具体的には、個々のリース契約の内容を詳細に把握し、使用権資産とリース負債の現在価値を算定、さらに決算時には減価償却費と支払利息を計上するなど、管理すべき項目が飛躍的に増加します。これらの煩雑な業務を、従来の管理方法のまま遂行するのは現実的ではありません。正確かつ効率的に新基準へ対応するためには、専用の管理システムを活用することが不可欠と言えるでしょう。
Excel管理の限界とリスク
多くの企業でリース契約の管理に利用されているExcel(表計算ソフト)ですが、新リース会計基準への対応においては、ヒューマンエラーの発生や業務の属人化といった重大なリスクを抱えています。手作業での管理には、以下のような限界があります。
| リスクの種類 | 具体的な内容 |
|---|---|
| ヒューマンエラーの誘発 | 割引率を用いた現在価値計算や、リース期間に応じた償却計算など、数式が非常に複雑になります。入力ミスや計算式の誤り、ファイルの破損といった人為的なミスが発生する可能性が格段に高まります。 |
| 業務の属人化 | 複雑な関数やマクロを駆使して作成された管理ファイルは、作成者本人にしか分からない「ブラックボックス」になりがちです。担当者の異動や退職によって管理方法が不明瞭になり、業務が停滞するリスクがあります。 |
| データ管理の煩雑化 | 部署ごとにリース契約を管理している場合、Excelファイルが社内に散在し、全社的なリース契約状況の正確な把握が困難になります。データの整合性を保つための集計作業にも多大な工数を要します。 |
| 監査対応の負荷増大 | 会計監査において、計上額の算出根拠や契約情報との突合を求められた際、Excelでは証跡を辿るのが困難です。監査法人への説明資料作成に膨大な時間がかかり、担当者の負担が大きく増加します。 |
固定資産管理システム「プロシップ」で新リース会計基準に対応
Excel管理が抱える前述のリスクを解消し、新リース会計基準へスムーズに対応するための最適なソリューションが、固定資産管理システムの導入です。特に、多くの導入実績を持つ「ProPlus(プロプラス)」をはじめとする専用システムは、新基準に準拠した機能を提供しています。
このような専門システムを導入することで、複雑な計算や仕訳作成を自動化し、正確かつ効率的なリース資産管理を実現します。具体的なメリットは以下の通りです。
計算の自動化と正確性の確保
リース契約の基本情報(リース期間、リース料、割引率など)を一度入力するだけで、新基準で求められる使用権資産とリース負債の計上額、決算時の減価償却費、支払利息などを自動で算出します。手計算によるミスを防ぎ、会計処理の正確性を担保します。
データの一元管理と内部統制の強化
全社のリース契約情報をシステム上で一元管理できるため、契約状況の可視化が図れます。また、変更履歴のログ管理機能や権限設定機能により、不正な操作を防ぎ、内部統制の強化にも繋がります。監査時にも、計算根拠を明確に提示することが可能です。
会計システム連携による業務効率化
システムが自動生成した仕訳データを、お使いの会計システムに連携させることができます。これにより、リース契約情報の一元管理から会計システム連携までをシームレスに行い、経理部門の業務負荷を大幅に軽減します。月次・年次決算の早期化にも貢献するでしょう。
新リース会計基準への対応は、単なる会計処理の変更に留まりません。管理体制そのものを見直す絶好の機会と捉え、システムの活用を積極的に検討することをおすすめします。
まとめ
本記事では、新リース会計基準の概要から適用時期、具体的な仕訳例、財務諸表への影響までを網羅的に解説しました。新基準の最も重要な変更点は、IFRS第16号とのコンバージェンスを目的とした、借手におけるリースの「原則オンバランス化」です。これにより、これまでオフバランスだったオペレーティング・リースも、使用権資産とリース負債として貸借対照表に計上されることになります。
この変更は、資産・負債総額の増加や、損益計算書における費用構造の変化(支払リース料から減価償却費と支払利息へ)など、財務数値に大きな影響を与えます。適用開始に向けて、企業は膨大なリース契約情報を収集・評価し、複雑な計算を行う必要があり、その実務負担は計り知れません。
こうした背景から、Excelなど手作業での管理には限界があり、ミスや属人化のリスクも高まります。したがって、新リース会計基準へ効率的かつ正確に対応するためには、「プロシップ」に代表される固定資産管理システムやリース資産管理システムの活用が不可欠と言えるでしょう。早期の検討と準備が、スムーズな移行の鍵となります。
